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A Light : No.5(終) [Livly長編;ALight]

そんなこんなで最終回なのです。
今回は一応「こんな話書いてるよ」という見本で載せさせていただきました^^

正直、ラスト5行が書きたいがためだけに始めたマラソンだった気が…

いや~それにしても反省点だらけでつたない長編でした…orz
しかし、反省点があるって事は、その分成長の余地があるという事に
なるような気がしますので、次につなげようと思います。


《現在より1カ月前・リヴリーポリス内救護班診療所》
「…と、いう訳デス…小生はひと時、間違いなくデーターゴーストに参加しまシタ。デモ…怖くナッテ、
タバサ副隊長に全てナスリツケテ…終わらせようとシタ…」
ベッドの上のタバサ副隊長、そのベッド脇に乗っかっているリンプ、そして普通に丸椅子に座った俺。
そんな3つの視線を受けて、ヤグラ総隊長が珍しく俯いて、声を硬くして、丸椅子でひと回り小さくなってしまっている。
「でも失敗した。ピンがメビウスを、ギハとして再生してしまった。スパイはもうすでに入りこんでいた。
そこで作ったのが『ヤグラ隊』だった。都合の悪いものを隠すため、隊長直属なんて近寄り難い小班にして」
タバサ副隊長がこれまでの要点をまとめる。リンプも俺も、あえてタバサ副隊長の方は向かない。
でも声が絶対零度だ。「あえて空気読まない」ヤグラ隊長も、明らかにそれには気づいている。
「…タバサ副隊長…小生ハ、副隊長のメンツや誇り、居場所、そして大切な仲間を奪いマシタ。
…小生のせいで、デス…謝って済む問題デハ無イ事は分かってマス。でも、言わせて下サイ…」
ヤグラ総隊長が丸椅子から勢いよく立ちあがる。凄い音がして椅子が倒れる。リンプが驚きすぎて床にトン、と降りてしまった音も聞こえた。多分椅子の音に驚いた訳じゃない。
「スミマセンデシタ…」
あのカリスマ的人気を誇る超有名人が、たった1人のリヴリーに対して土下座している。額を床につけて、
深く深く頭を下げている。俺もリンプも、ただただ驚いていた。
しかしタバサ副隊長は特に何も言わない。相変わらず絶対零度だ。重苦しい空気が漂う。
流石のリンプも動けない状況で、俺が動けるはずが無い。
そんな感じでしばらく固まっていた時間を動かしたのは、タバサ副隊長だった。
ゆっくりと立ち上がったタバサ副隊長は、大股3歩でヤグラ総隊長のとこへたどり着く。ヤンキーがパシリを
見下すような視線を向ける。
「顔を上げてください。ダークヤグラ総隊長」
「おいちょっとタバコ買ってこいよ」という台詞とほぼ同じ空気感でタバサ副隊長がヤグラ総隊長に
声を投げかける。
座ったまま恐る恐る顔を上げたヤグラ総隊長と無表情のタバサ副隊長の瞳がかち合う。
数秒間だけ。
ゴッ!
気づいた時には鈍い音がして、ヤグラ総隊長が尻もちをつき、数メートル程無様な姿で滑っていっている所
だった。何でそんな事になってるかは明白で、タバサ副隊長の右腕は今まさにストレートをかましましたよ、と
主張しまくっている。
そのままバランスを崩してぶっ倒れかけたタバサ副隊長を俺が慌てて支える。息は荒い。
かなり無理したみたいだ。そんな感じでヘロヘロになりながらも、タバサ副隊長は怒りをぶちまける。
「ふざけんな!テメェの尻拭い、ただ、その場に居合わせただけで俺にさせやがって!…ハァ…本ッッ当に
ふざけんなッ!…バカ野郎…!…テメェなんか、データーゴーストの連中以上の悪人だよ!…」
ヤグラ総隊長は何も言うことができず、滑った体勢のまま俯いている。これからもっと責められるのは
覚悟済みって感じだ。だから、その次のタバサ副隊長の発言は完全に予想外だったらしい。
「でも…もう良い…」
「…タバサ副隊長?何ヲ…」
「…だから、もう良いって…言ってんだ」
ズルズルと、俺の腕からタバサ副隊長の身体が滑り落ちる。予想外すぎて俺もパニックになってるみたいだ。
身体が動かない。
「総隊長のやった事は許されない…でも、今さら何やっても、何責めても、意味ねぇ…だから、許してやる…ってんだ…」
そう一気に言って、タバサ副隊長はフッと表情を緩める。
「…そうやって、優越感感じさせて下さいよ。こういう時くらい…」
ヤグラ総隊長は、その言葉の意味を測りかねてぽかんとしていたが、やがて照れくさそうに微笑む。
バランスを取りながら立ち上がると、タバサ副隊長に肩を貸そうとして、俺を手招く。
「か弱い小生1人に、副隊長を運ばせるつもりデスカ?」
「総隊長のどこがか弱いんですか!」
リンプがニコニコしながら突っ込みを入れる。
後はもう何事もなかったみたいに、いつも通りの俺たちだった。

《現在より1日前・リヴリーポリス内、ピン私室》
「タバサさんらしいなぁ。ソレ!」
「だろ?パンチ一発で許してやるなんて、男らしすぎって思った」
「それで一応、ダークヤグラ総隊長とタバサさんの関係はひと段落したんだよね?」
「まぁな。今は身体の調子も元通りになって、ヤグラ総隊長手伝ってキリキリ働いてる」
「そういえばさ、その後瑠姫とはどーなったの?」
「ちょ…ちょっと待てお前なぁ…!」
「うろたえなくていいじゃん!一般リヴリーの2人がその後どうなったかって事だよ!」
「ああ…そういう事か。瑠姫とラクーンドックは…」

《現在より2週間・リヴリーポリス内、ダークヤグラ執務室》
「良いのデスカ?」
ヤグラ総隊長は不安げに瑠姫とラクーンドックを見る。2人はほとんど同時に首を縦に振る。
「僕らだけでも覚えておかないといけない気がするから…起こった事とか。ピンの選択も聞いたわけだし」
ラクーンドックははっきりとそう言って、瑠姫と顔を見合わせる。ちょっと俯いていた瑠姫も、顔を上げる。
「私は…贖罪し続けようと思います。…『最後の1人』として」
ヤグラ総隊長は、瑠姫の横に立つ俺に視線を向けてくる。いいのかと聞いているようだ。
「…3人で話し合いました。最終的に、俺も納得してます」
それまでに、すごい仁義なき争いが繰り広げられたけど。何ていっても一生消えない「イレズミ」を脳みそに
入れるようなもんだから。でも結局、2人に押し切られた。納得はしているが、心配は少しある。
「それならば良いノデス。でも3人とも、思い詰めないで下サイネ…」
総隊長も少し心配そうだ。まぁ、総隊長にとっても初めての経験だろうし。
一般リヴリーに自分で「選択」させるなんて。
「明日、記憶消去をシマス。2人はポリス内に居て下サイ」
「復活の儀式」後、リヴリーアイランドは混乱した。多くのリヴリーは自分に何が起きたのか知ろうとした。
「データーゴースト」の仕業だと勘づいた奴らは、行方不明の幹部団を探そうとした。元幹部が行方不明になったと知って、「自分こそが次の『データーゴースト』リーダーだ」と言いだしたリヴリーはかなり大勢居る。
この混乱を収めるべく、ヤグラ総隊長は1つの決断を下した。
それが「リヴリーアイランド全体への記憶消去」だ。対象となるのは管理リヴリーとリヴリーポリスの一部以外の全体。
瑠姫とラクーンドックの処遇をどうするかでヤグラ総隊長は本気で悩んだらしい。2人は「復活の儀式」後、捜査情報が漏れるのとか襲われるのとか防ぐために身柄保護されていた。最も事件に近い一般リヴリーであり、
事件解決の足掛かりにもなった2人の記憶を消すのはヤグラ総隊長であっても抵抗があって…
で、結局あの人にめずらしく本人たちに決めさせる事にした。という事で。
「これで本当ニ…何もかも、終わリデス。元データーゴーストの彼らモ…」
「いいえ。ダークヤグラさん。ここから全部、始まるんです」
瑠姫がヤグラさんの言葉をさえぎってはっきりと言った。前向きで明るい声だった。
「私たちみんな、ここからまた歩き始めるんですよ」

《現在より1日前・リヴリーポリス内、ピン私室》
「素直に『そうだよな』って思った」
「ふぅ~ん?」
「…何だよその不服そうな声は…」
「別に?…それでさ、その…」
「ああ…アイツらの事か?アイツらは…データーゴーストの奴らは…」

《現在より10日前・リヴリー引き渡し所入り口》
悲喜こもごものリヴリー引き渡し所の中で、そのリヴリーたちは戸惑ったように立ち尽くしている。
何で自分たちがここに居るのか分からない、という表情だ。アイツら自身も、多分周囲のほとんどのリヴリーも、アイツらが世界を滅ぼそうとした事なんて忘れているだろう。
データーゴーストの元幹部たちは、眠り続けていた間の記憶を完全に失っていた。
俺たちの問いかけにも首をかしげるばかりで、聴取なんかできるハズもなかった。
結局、記憶を完全に改ざんして釈放する事になったのだ。
俺、タバサさん、そしてリンプは受付からそっと、戸惑いながらも外へ向かう5人の様子を眺めていた。
「行ったな…」
「行きましたねぇ…」
タバサさんとリンプが感慨深げに呟いた。わずかに空しさが感じられるような声だった。
「これで…何もかも終わったんだな…」
しみじみとタバサさんがさらに呟いた。瑠姫の言葉が浮かぶ。タバサさんはあの場に居なかったのだ。
俺はボソリと瑠姫の言葉を繰り返した。
「ここから、始まる…」
「…ピン?」
「ここから、始まるんですよ…アイツらも、俺たち…」
タバサさんとリンプが顔を見合わせた。
「らしくないセリフだよね?ピン」
「うるせぇ!」
「似合ってないけど、ま、悪くはない」
「タバサさんまで!」
そう言って笑っている間に、5人の姿は群衆に紛れて見えなくなっていった。

《現在より1日前・リヴリーポリス内、ピン私室》
「良かった…」
「ホントにな…アイツら、大丈夫だよな…」
「他より、自分はどうなんだよ」
「…え?」
「まったくもー!本当に鈍感だよねピンって!」
ありえない程満点の星空の夜。
俺の部屋の開け放された窓。
そのわくに腰かけたギハが怒ったような声をあげた。
天使みたいな羽をパタパタさせて、ベッドに寝っ転がった俺目がけて飛んでくる。
「また逃げてる!不安すぎて、挙句のはてに自分の夢の中に僕なんか作り出して!」
「違ぇ!逃げてない!」
「ウソだ!」
「逃げてない!…ただ、不安なだけだ…」
俺の横あたりで羽をパタパタさせていたギハが一瞬きょとんとして、それからまた、呆れたような顔をした。
「…どーせ、また僕のことだろ?」
「…鋭すぎるだろ…」
「僕の事、忘れないか、不安?」
正解だった。
俺がこれから生きていく中で、ギハの事を忘れてしまわないか。
「選択」をした後の俺の一番の気がかりは、それだった。
「ギハは…この世界のために消えたんだ。それなのに…俺たちは忘れていく…俺も含めて」
ギハがフッと溜め息をついた。
「呆れたか…?」
「すごぉくね。だいたいさぁ…僕は忘れられるために消えたんだよ?」
「分かってるけど…」
ギハは宙に浮かんだまま渋い表情をしていたが、やがて思いついたように微笑んだ。
「前にメビウスが『心の中に大切なものは残る』って言ってたでしょ?」
「…まぁ…」
ベッドの上に降り立ったギハはしゃがみこむ。そして俺の目を覗き込むように見ながら、心臓の方を指差した。
「だから…本当に覚えておきたいんだったらさ、僕はずっとここに居るんじゃないかな?」
「…」
そうか…
そうか…
「そう…かな…」
「…胸張りなよ。ピンの『選択』は、間違ってない」
ギハの微笑みは霞のような白いものにまかれていく。そして―

《現在より5時間前・リヴリーポリス内、ピン私室》
窓の無い部屋。
俺のベッドの横には空のベッド。
満面の星空も、心地よい夜風も、羽の生えたギハも消えうせた、いつも通りの私室。
「夢…か…」
自分に呆れかえってしまった。ギハの幻想に自分の『選択』は間違っていないなんて言わせるなんて。
自分の女々しさに笑いも出てしまう。
「『心のどこかに大切なものは残ってる』か―…」
あの日のメビウスの表情と、昨日の晩のギハの微笑みがだぶった。

《現在より3時間前・リヴリー引き渡し所入り口》
瑠姫とラクーンドックは2人で並んでそこに居た。俺は黙ったまま2人のもとに向かう。
しばらく3人で向かい合っていた。
「…私たち、待ってます」
口を開いたのは瑠姫だった。小さいが、はっきりとした声だった。
ラクーンドックも大きく頷く。
「きっと、またすぐに会えるよ。それまで2人で待ってる」
涙が出そうになった。でも、泣ける訳無いだろ?
無理矢理笑顔を作って、2人に笑いかけた。
「すぐ帰ってくる。また、すぐに…」

《現在・リヴリー引き渡し所内、選択部屋》
また葬式のようなにぎやかさの中に俺は居る。
引き渡されたリヴリーが、今後の自分の道を選択する「選択部屋」。
普通、リヴリーポリスから「リタイア」する隊員はここに来る事はあまり無いが、
俺はあえてここに送ってもらえるようにしたのだ。
俺はあの日みたいに壁に寄り掛かって、周囲の様子を眺めている。
担当になった数人の隊員たちの姿の中に、見覚えのある2人の姿を見つける。
2人はこちら側にゆっくりとやって来る。
でも、俺たちは、親しげに手を挙げたりはしない。もう「違う世界」のリヴリーだ。
2人は俺の前を通りすぎていく。
2人組の片方―黒いパーカー姿のヴォルグが、短く呟く。
「頑張れよ」
俺は答えない。
そのまま2人は通り過ぎていった。

ヴィリエとして生きた時間。
ピンとして生きた時間。
あの日、俺が選ぼうとした道。
でも、選ばなかった道。
そして―今まで選ぼうともしなかった。
見ようともしなかった、俺の道。
これから俺は選択する。
俺の道を。

あの日立たなかった門の前に俺は立っている。
選択の門―『一般リヴリーに戻るための門』。
この先にあるのは希望なのか絶望なのか、それは分からない。
それでも、俺は歩んで行こう。

この広いネットワーク空間の、小さな小さな世界。
その中に散らばる、1つ1つのデータの集合体。
一瞬にしてかき消されても疑い無いような存在。
それでも、その1つ1つの歩みが、全ての真実。
かけがえの無い、ひとつきりの光。


Fin.

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